私はかれこれ6年、11万キロ、共に生活してきた車がある。
その名も
フェアレディZ32
中期型である。日産の誇る代表的なスポーツカー。
これに乗る前はホンダのライフの白だったなぁ。
そんな私がある日を境にZの人となった。
きっかけは・・・、なんだっけ。
あ、そうそう、何を思ったか、ある日車を買いかえようと思い立ったのだ。
家の付き合いの関係でホンダ車を乗り続けていたのだが、他のメーカーのも気になりだしたと。
で、通勤コースでいつも目にする三菱のFTOがなんだかとってもかっこよくて。「あれに乗りてーーー!・・でも女でああいう車に乗ってると変な人に思われるかなぁ。」と悩んでいた。
そんな矢先、当時まだ未旦那であった旦那(分かりにくい)つまり結婚前の時、元日産の整備士だった旦那に相談したのだ。
そしたら
「あー、、FTOも別に悪くはないけど、、
Z はどうだ? 」と言われた。
「Z?あぁ、あのホンダの軽の?」
「や、ちゃうちゃう、日産の
フェアレディZ」
正直全く知らない車だった。
写真を見せてもらって驚いた。
スポーツカー!黒!でかい!
これは・・・女で運転したら世間にどう思われるんだろうか。。。が、最初に思った正直な感想だった。
黒のスポーツカーは私の中ではちょっと印象が強く、中学時代の担任の先生がトヨタの黒のスープラに乗っていて、その形がめっちゃかっこよくて羨ましくて。そしたら親友のN美さんのお兄さんが同じ黒のスープラに乗り出して。遊びに行く度に目に入った黒い車。とんがって全体が長い車。
そんな黒いスポーツカーに憧れてはいたけど、それを自分が・・・?いいんだろうか。私なんかが乗っても良い車なのだろうか。
まだ20代始まって、自分というキャラクターがしっかり組み立てられず、お金もそんなにある訳でもなく、車の知識も皆無。
黒いスポーツカーを乗りこなす女、なんて、憧れの世界で、軽でちょっとエアロつけて、いきれて走るおねーちゃんくらいが私だろうと。
写真や雑誌で見るZの、あまりに気高く、そしてありえないほど美しい、まさに別格の車、自分がその場所に行く、対等の存在になる事への自分への自信が全く無かった。
その後、自分の中でふんぎりがつかないまま、なんとなくZ購入の交渉が始まり、中古車を探してもらうことになった。
そして2ヶ月後、ついに広島県の福山市で探していたグレードのZが見つかったとの報告が。
ワンオーナーで状態も非常によく、改造も一切無くほぼ純正。まさに幸運の一台だった。
そして不安と希望の中、購入を決定し、最終引渡し前に試乗をさせてもらえることになった。
正直不安の方が大きかっただろうか、日産のお店に着くまでの間。
そして、その車がそこに居た。
カラスの濡れ羽の様に真っ黒く、前後の長さ、特にボンネットの長さがとんでもなく長く、一種独特の、他の車とは全く異なる世界を醸し出していた。
「うわっ」
と思ったなぁ。。あまりに強すぎて。
試乗させてもらった時も、まだ前の持ち主の雰囲気が残る車内を感じながら、「私ですみません・・」とちょっと謝りながら乗ったなぁ。。
「誇り高き魔性の貴婦人」
Zのサブタイトル的な言葉。
全然負けてしまっている私は、どこまで近づけれるだろうか。
この車に相応した人間にいつかなれるだろうか。
実は、今でも想い続けている。
いつ、どこでも、今でもなお、駐車場で振り返る度、その美しさに見とれてしまう。
いろんな旅を経て、いろんな思い出を共に重ね、何度も命をこの車に救われて、私の中で、この車はただの乗り物とは違う、切っても切れない存在になった。嬉しい時、仕事で疲れきった時、ハンドルを握りながらボロボロ涙を流した時も。
一度、高速で走行中突然タイヤがバーストした事がある。
幸運な事にすぐ前方がバス停だった為安全に停まり、バス停内で待機しながら救助を待った。
その間、高速の路肩で少し傾いて止まっているZを見て、物凄く・・・文字には表せない気持ちになった。
何よりも大切な存在であるけれど、まだ・・・まだ、この車には近づけれない。その誇りに触れる事ができない。
永遠の追い人
それが私のZなのである。
「今日はなんだか長かったですね」